私が整備士を志したのは中学2年生の時です。きっかけは、障害のため運転免許を取得できない兄の存在でした。兄が車を心から好きだった姿を見て、「自分が代わりに整備士になる」と宣言したのです。興味も知識もなかった私にとって無謀とも言える決意でしたが、その一言が人生を大きく変えました。
工業高校、専門学校を経て某トラックディーラーへ入社しました。現場では想像を超える厳しい労働環境に直面し、深夜まで続く残業や大量の案件に追われる日々でした。それでも、自分が手がけた車両が街を走る姿を見た時の感動は忘れられません。やがてフロント業務に移ると、お客様から直接「ありがとう」と声をかけていただく機会が増え、整備の本質は単なる修理ではなく、信頼と安心を提供することにあると気づきました。
その後も複数の会社を経験しながら、「自分の理想の整備サービスを形にしたい」という想いが募っていきました。待遇や残業の多さなど、業界の課題を肌で感じたからこそ、自分で環境を変える必要があると強く思ったのです。そして2017年、大日整工株式会社を設立しました。
起業当初は、工場用地の確保や認証取得に奔走し、整備士としての知識だけでは解決できない壁に次々と直面しました。それでも「整備士が誇りを持って働ける場所をつくる」という信念を貫き、仲間とともに二つの工場を立ち上げ、少しずつ会社を軌道に乗せてきました。
整備の魅力は、自分たちが修理したトラックやバスが再び道路を走り、社会の基盤を支えていることを実感できる点です。看板を背負った車両が元気に走る姿を見かけるたびに、「自分たちの手が社会を動かしている」という誇りを感じます。運んでいるのは食品や衣料、住宅資材、家電といった人々の暮らしに欠かせないものばかり。整備士の仕事は、まさに「当たり前の日常」を支える大切な役割なのです。
一方で、若者の車離れや3Kのイメージによって整備士志望者は減少しています。だからこそ当社では、資格手当や休日制度を整備し、平均残業時間を月20〜30時間程度に抑えるなど、働きやすい環境づくりを進めています。「整備士はかっこいい仕事である」と胸を張れる環境を整えることが、私の経営者としての使命です。
これからの目標は、整備士の地位向上と次世代の育成です。若い世代が憧れを持ち、「自分も整備士になりたい」と思える未来を築いていきたい。そして挑戦を迷う人々に伝えたいのは、完璧な準備よりも一歩踏み出す勇気こそが、未来を切り拓く力になるということです。
未来を担う整備士たちが、誇りを持って働ける環境を築くことこそ、私の最大の挑戦であり使命なのです。





