私がBASEを立ち上げたきっかけは、2012年に母が「ネットショップを作りたい」と言った一言でした。当時のサービスは大企業や専門知識のある人にしか手が届かないものが多く、「これでは多くの人が挑戦できない」と強く感じていました。それならば自分が作ればいいと思い至ったのです。
創業から一貫して、私は「個人や小さなチームの力を引き出すこと」にこだわってきました。資本や技術に恵まれなくても、自分の想いを形にできること。そんな社会こそが公平で豊かな社会だと信じています。BASEはモール型ではなく、常にショップオーナーを主役に据えていくことで、その背中を支える存在でありたいと思っています。
サービス設計では「誰でも簡単に使えること」を徹底し、AIなどの先端テクノロジーも積極的に取り入れてきました。商品説明文の生成や販促文の提案などを自動化し、オーナーが「その人にしかできない仕事」に集中できる仕組みも取り入れています。テクノロジーは人を置き換えるためではなく、人の可能性を解き放つためにあると考えています。
私が思い描く次の10年では、ショップだけでなく購入者の体験をより豊かにしていく挑戦にも力を入れていきたいと考えています。Pay IDによる購買体験や多様な決済機能などを整え、購入者とオーナーがより強くつながれる世界をつくっていきたい。そして目指すのは、多様な価値が流通し、誰もが自分らしい選択をできる社会です。
私にとって「豊かさ」とは、周囲との差異がマイナスではなく、プラスの価値に変わること。誰もが自分のやりたいことを実現し、違いを武器にできる社会とも言えるでしょう。インターネットはその実現を後押ししてくれると信じています。加えて、私自身がこれまで多くの起業家やオーナーに出会って学んだのは、人の想いには計り知れない力が宿るということです。テクノロジーが支えるのは、その熱量をより多くの人に届けるための橋渡しなのです。
振り返れば、学生時代に起業した私には、知識も経験もありませんでした。むしろ「無知」だからこそ既存の常識にとらわれず、大胆に動くことができたのだと思います。そして失敗を恐れず試行錯誤した日々が、今に繋がりました。挑戦の芽は、完璧な準備よりも一歩踏み出す勇気から生まれるのだと実感しています。
若い方々に伝えたいのは、知らないことは弱みではなく、強みになるということ。今だからこそできることに臆せず挑戦してください。あなたの違いが、誰かにとって大切な価値に変わるでしょう。その瞬間こそが、未来を豊かにしていく原動力になるのです。恐れず行動すること、そして挑戦を楽しむこと。それが、これからの社会を切り拓く最も大きな力になると信じています。




