祖父が創業した当社は、新築・リフォームの屋根、外装工事を行うハウスメーカー指定工事店です。若手人材が減少してきている建設業界ですが、次の時代まで会社を存続させるためには、若い力が必要不可欠です。そこで当社は、若手社員の定着を目標に、一人ひとりの長所を見極め、活躍できるポジションを任せ、成長できる環境づくりに取り組んでいます。

例えば業界未経験で入社した社員は、会社の役に立てるか不安を抱えていました。話をしてみると「もともとクリエイティブな仕事をしてみたかった」と打ち明けてくれました。その言葉を受け、建物の外観を立体的に描く「パース図」の作成を任せることに。彼女はその仕事を通じて才能を開花させ、今ではお客様に建物の完成イメージを正確に伝えるための重要な役割を担いつつあります。社員の適性に合った仕事を任せることは、働きがいのある職場の実現だけではなく、企業の競争力にも直結します。やりたいことに挑戦できる環境があるからこそ、若手社員が定着し、経験豊富な中途人材にも選ばれる企業に成長できました。

このような会社づくりの原点は、社長就任時の「問題から逃げない」という決意にあります。私が入社した2013年頃は、業務の大半を紙と手作業に依存しており、デジタル化が進んでいないことに、危機感を覚えました。私は大企業で活躍している友人達に入社してもらい、一気に改革を推し進めます。優秀な人間が指揮を執ることで会社は良くなると信じていたのです。一方で、強引な社内改革に不満がたまり、退職者が続出。思い返すと、他人任せな改革でした。

そんな会社が窮地のタイミングで、当時社長だった父のガンが発覚したのです。「自分が余計なストレスをかけたせいだ」と自責の念に駆られ、会社の退職も考えました。しかし、ここまで会社を守ってきた父のためにも、私の代で会社が終わらないよう「これからは絶対に逃げない」と腹を括ったのです。そこから一つひとつの課題に取り組んだことで、少しずつ問題が解決していきました。

若者の皆さんも、辛くてもやりたいことなら逃げ出さずに取り組んでみてください。なぜなら、人生で起きる出来事には間違いなく意味があるからです。私の人生のターニングポイントは、社長就任後に正面から問題に立ち向かった時です。当時は、会社の社員の若返りは難しいと思っていました。しかし、社員の長所を生かす経営に切り替えたことで少しずつ若手社員が増えていきました。あの時の頑張りが今に繋がっています。挑戦する前は高くそびえる壁に見えますが、歩き出すと意外と問題は解決していくものです。そして力を尽くし辛い時期を乗り越えた先に、大きな成果が得られるでしょう。