大学時代を振り返ると、自分の居場所を見つけられずにいた感覚を思い出します。成績もあまり良くありませんでした。世の中の流れに従って、それとなく就職活動を始めたところ、複数の内定を獲得。大手の内定もあったのですが、どうしても１社に絞れず、４〜５ヶ月悩んでも答えが出ませんでした。代わりにわかったのは、会社を選ぶ基準が自分の中になかったということ。そこで私は、内定をすべて辞退し、就職浪人することを決めました。そのころはちょうど就職氷河期。１社でも内定があればラッキーという時代です。そのため大学の教授や両親からは強く反対されましたが、私の意思は変わりませんでした。それまでは周囲に言われるがまま進路を選んできた私。それゆえに、この経験は、初めて自分で決断をした出来事でした。

２度目の就職活動で私は所属大学にはない情報を求め、他大学の就職課に足を運びました。当時はインターネットがまだ普及しておらず、就職活動の情報収集手段はかなり限られていました。その中で大学の就職課は主要な情報源かつ相談窓口だったのです。その大学の学食を訪れると、就活に励む学生たちがディベートの練習をしていました。私も混ぜてもらい、彼らのフロンティア精神や変革マインドに触れていくうちに、人生で初めて、同じDNAを持つ人に出会えたように感じたのです。こんな人たちと一緒に仕事がしてみたい。その想いが就職活動の軸となって、彼らの選択肢としてもポピュラーだった、外資系コンサルティングファームを１社目に選びました。

それから当社を立ち上げたのは、入社から３年ほどたったタイミングでした。コンサルタントとして、クライアント企業に経営戦略を助言するよりも、自分で事業を起こす方が、より強いインパクトを世の中に与えられると思ったからです。また、就職活動で出会った仲間たちが続々と起業していたことも、私の背中を押してくれました。

「@cosme（アットコスメ）」のアイデアを思いついてから会社を設立するまでの期間は、約２ヶ月。ボーナスと結婚準備資金を元手に、資本金300万円で会社を立ち上げました。コンサルタントの激務と並行した独立準備は大変でしたが「仲間に追いつきたい」「仲間に恥ずかしくない自分でいたい」という想いが原動力となりました。

当時の仲間との関係は今でも続いています。私にとっての就職浪人は、今ある環境に入れてもらうという受け身の姿勢を完全に捨て、自分自身が本当に納得できる道を探した時間でした。自分らしくいられる場所を、自分の手でつくっていく。その先に、切磋琢磨できる同志との出会いがあり、その強い絆が当社の成長を支える力となりました。ぜひあなたも、自分の心に従い、自らの意志で居場所をつくる勇気を持ってほしいと思います。