私は眼科手術を専門とし、「手術を通じて患者さんの生活を変えたい」という思いを胸に日々診療に向き合っています。院名に「手術」を掲げたのは、手術を中心にした医療を追求し続けたいという姿勢を表すためです。
進路を明確に意識したのは研修医時代でした。初めてミリ単位の手術に触れ、自分の手が小さな変化を生む感覚に心を捉えられ、「これこそが自分の天職かもしれない」と確信した瞬間を今でも鮮明に覚えています。
その後、名古屋大学病院での研鑽や米国留学での修練、帰国後の難症例との対峙を重ねる中で、私の診療スタイルは形づくられていきました。そして、ある患者さんが眼の手術後に「久しぶりに孫の顔が見えた」と涙を流されたとき、医学が人の生活を取り戻す力を持つことに感動しました。
私は患者さんの五感に寄り添い、緊張を和らげ、心身ともにリラックスできる環境を提供することも必要だと考えています。医療は単なる「技術」ではなく、患者さんにとっての「体験」としても捉えるべきものです。当院ではピアニストによる生演奏やアロマの香りなど、緊張を和らげる工夫をしています。ある高齢の患者さんがピアノの演奏を聴き、子ども時代を思い出して穏やかな表情を取り戻された姿を目にしたとき、院内環境が回復を後押しすることを実感しました。
組織運営においては、スタッフの声を尊重しています。採用や会議の場にも主体的に関わってもらい、課題を共に解決していく姿勢を重視しています。この考え方の背景には、かつて病棟で人手不足や離職に直面した経験があります。その学びから、共感や責任を分かち合うことこそが、組織を強くし、よりよいチームの力につながると実感しています。
教育の場では、観察からアシスト、そして主担当へと進む責任を伴う成長プロセスを重視しています。小さな役割を担いながら少しずつ責任を広げていくことで、次世代が確かな力を培っていけると考えています。
さらに私は「クリニックで実現したいことや描く未来」をスタッフとも共有するようにしています。夢や目標を分かち合うことで、スタッフ一人ひとりもまた、自分の役割の中で未来を描きやすくなるからです。互いにビジョンを語り合うことが、組織を前に進める大きな力になると感じています。
最後に若い皆さんへお伝えしたいことがあります。目標はぜひ言葉に出してください。夢は一人で抱えるものではありません。誰かに伝えることで、未来は少しずつ形になっていきます。心に思うだけでは形にならないことも、言葉にして誰かに伝えると不思議と動き始めます。「こうなりたい」と声に出すことで、周りがヒントをくれたり、背中を押してくれたりする。そうした仲間の存在が、迷ったときの道しるべになるのです。





